私たちが綿花の栽培に使用している農地は、人の手が何年も加わっていない休耕地がほとんどです。荒れた土地に埋もれた大きな石を取り除き、雑草を刈り、細かいゴミを回収してから土を耕し始めます。トラクターに追われて蜘蛛やバッタが走りまわり、起こされたカエルやミミズが顔を出すと、それらの虫たちを捕らえるために鳥たちが後をついてまわります。
このように、人を含めた生物の繋がりの光景には、脈々と受け継がれてきた生命の美があるように思えてなりません。そして、草花や土の匂いを身体全体で感じながら畑作業をすると、言葉では表せない喜びと充足感に包まれていきます。自然界に存在する動植物を認知することは、そこに立つ自身の命を見つけ、環境との関わり方に気づくことが出来るからではないでしょうか。
ただ、自然との共生には正しい知識に基づいた方法が必要です。その土地の文化・資源はそれぞれに異なり、たくさんの積み重ねがあって現在の生態系が作られてきたからです。
むやみやたらに手を加えず、その風土に合った正しい保全を学び、使う側の知識と実践に基づいて管理していくことが必要です。まずは少しずつ土を耕し、童心に返って生き物を観察するところから始めたいと思います。